2021-06-28 「まつだせいこ」と誤読させたい松田青子

松田青子さんのエッセイが面白すぎて,家で一人で声に出して笑ってる.

 

彼女との最初の出会いは(厳密には彼女の文章との出会い,なのだけど)『持続可能な魂の利用』だった.正直,not for meだった.一冊前に『推し,燃ゆ』を読んでアイドルがモチーフの作品繋がりで読んだからということもあって,あまりにストレートでダイレクトすぎるものいいが気になったし,ところどころ「わかる〜」はあるんだけど全体としてはスケールが謎.てか,最後のあれ,何?ハーモニー?

 

というわけで第一印象はあまりよくなかったのだけど,信頼しているツイッタラーたちが(これ,死語かな?)『女が死ぬ』に言及しているのを見て,再度トライしてみた.

・・・めちゃくちゃよかった.言っていることはどストレートだし,生活に根ざしたものなのだけれど,それが何故かシュールな異界と混ざって提示される不思議な感覚.鋭い舌鋒.身近な違和感に妥協しない姿勢.怒りをユーモアに.胸がスッキリした.これはエンターテインメントで,エンパワメントだ.幾つかの言葉はお守りになった.

小説はほとんど全て読んだ.『持続可能な魂の利用』以外は全て短編で,私にとってはむしろ短編がよかった.というか,松田氏もこれまで短編メインで書いてきた作家なのだから現時点で短編の方がしっくりくるのはそれはそうだろう.

 

というわけで小説を全て読み終わってしまい,エッセイを読んでいる.エッセイが面白い人と小説が面白い人は一致するときもあるけどぜんぜんしないときもあるし,正直小説が面白かったぶんがっかりしたくなかったからちょっと迷っていたのだけれど,ものすごく面白かった.やっぱり,日常の切り取り方がうまい人だと思う.読んでいる間,彼女の目で世界を見ることができるのがとても嬉しい.